[961] Re: 追加の解説
投稿者名: たびと
投稿日時: 2001年5月5日 13時41分
うささぎ様
「である」「です」の混ざった稚拙な書き込みに対して感謝を受け、かえって
恐縮しております。
>ただ確認のために重ねておうかがいしますが、そうした硬質の石材を素材と
>する彫刻の制作に用いたとおぼしき石器の存在は、出土遺物によって確認さ
>れているわけではなく、むしろ一種の消去法と実験考古学の成果(?)に基
>づいたものと考えてよいのでしょうか。
アスワーン(Aswan)の花崗岩の石切場やジャバル・アハマル(Gebel Ahmar)の珪岩の石切場などから、切出す際にハンマー(たたき石:pounder)に使用されたと考えられるdolerite(粗粒玄武岩)の破片が発見されている(Lucas,A.,Ancient Egyptian Materials and Industries,1926(4th ed.1962), London,pp.409-410)。
また古王国時代のマスタバ墓壁面には彫像製作を示す彫刻家のアトリエを描いた壁画(レリーフ)が数多く残されており、木彫や石彫の加工や仕上げの過程を詳細に確認することが出来ます(Eaton-Krauss,Marianne, The Representations of Statuary in Private Tombs of the Old Kingdom,1984, Wiesbadenなどが参考になると思います) この本の中でも鑿は、木材や軟らかい石材に使用された(p.49)と述べられています。木彫では斧も使用されたとされています(p.51)。しかしながら、硬質石材を使用した彫像製作場面としては、新王国第18王朝のレクミラ墓(TT.100)壁画に赤色花崗岩の彫像の仕上げに石が使われているところが存在しています。
またZuberは、青銅製の鑿が硬質の石材に使用されなかった根拠として、硬質石材で製作された未完成の彫像に金属のピックや鑿の痕跡が見当たらない点を指摘していますし、また実験的に小さな花崗岩の頭部をフリント製道具だけで加工する(研磨は含まず)のに、36時間しかかからなかったことなどをあげています。
>それともう一つ、花崗岩や閃緑岩のように本当に硬く加工の困難な材質の彫像
>の制作に使われた「さらに硬い石材」は何だったとお考えですか。
dolerite(粗粒玄武岩)の鎚(maul)や球状の敲石(pounding-ball)などが遺跡から発見されています(Clarke,S. & R. Engelbach, Ancient Egyptian Construction and Architecture, 1930, London. p.227.)dolerite(粗粒玄武岩)以外にも、フリントや硬度が7以上の石材が使われたとする説もあるようですが、例えば、緑柱石(beryl:硬度7.5),トパーズ(topaz:硬度8),金緑石(chrysoberyl:硬度8.5),ルビー(ruby:硬度9),サファイア(sapphire:硬度9),ダイアモンド(diamond:硬度10)など、ただこうした硬質石材の採掘はどうしておこなわれたかという疑問もあります。
そこで恐らくもっともありそうなものとしては、石英の粉末や金剛砂を利用して石材の切り出し加工が行われたという考え方です。
金剛砂(emery)は先王朝時代から初期王朝時代にかけて多くが発見され、石製容器の加工研磨剤と考えられている。エジプト・キクラデス諸島の関係については、先王朝末期に、この「金剛砂」が交易品目に加えられたとされている。クレタ島などからは先王朝末期の石製容器も発見されていると思いました(文献手許にないので記憶で失礼)。ではまた。 |
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